ホワイト ギフト    小堺  高志   2009年1月1

 

ここエルエーでも遠くに臨むローカルの山々の山頂を雪が覆い、街のところどころで紅葉した樹葉がみられる師走となった。年末を前に、クリスマス イブの今日24日からは5連休である。マンモスから雪の便りが届いている。今週になってからすでに80cm、今日からさらに新しい大型のストームが来るらしい。

 

今年は10月に入り急速な株価の暴落で不況風が吹き始めた。うちの会社も大いに影響されているが、今のところ私のセクションには大きな影響はでていない。しかし来年、再来年は厳しい年になるであろうことは疑いのない事である。バブルに膨らんだアメリカの景気を萎ませた発端はサブプライム住宅金融証券であり、誰でも家を持てるように安易な審査で持ち家のための融資をしたことによる焦げ付きである。株価が急落したことにより、少なからず老後の蓄えを株に投資している多くの国民が買い控えをして物が動かないようになってしまった。もともとアメリカはかってのように物作り、開発に力を注ぐ事をやめてしまった。その代わり世界中から投資を受け株価を上げ、金融で成り立つ国家体制を作ってしまった。膨れるところまで膨れたバブルがクラッシュした今、金融救済のためのお金は結局は国民の税金の前倒しであり国民が負担しなければならない借金である。そのゴールドマン・サックスを含む救済案を取り仕切っているハンク財務長官は元ゴールドマン・サックスの会長であり、この状況を作り出した張本人の一人である。バブルの恐ろしさを知った外国からの融資も、一般国民の株への投資熱も2,3年で今までのように戻ってくるとは思われない。これは半世紀以上に渡り世界に君臨したアメリカ経済帝国の終焉であり、10年かかってもかっての繁栄は戻ってはこないと思う。バブル崩壊の前に手を打っておかなかったブッシュ政権の舵取りミスであり、その責任は大きい。しかし彼はのうのうと退陣後の生活を楽しむのであろう。

 

暗い世相ではあるが、せめてスキーくらいが我々庶民の楽しみである。

今期のスキーのコンデションで言えば景気に反して、ここまでは凄く良いシーズン初めであり、例年より雪が多く降っている。前日は奥さん孝行で食事にでて、クリスマス イブの24日の朝、午後から来ると予報されている嵐を避けるため、朝8時45分にトーレンスの自宅を出てマンモスに向かう。今回、佐野さんは2日間だけ参加したいというブライアンと昨日23日の夕方に発っている。よって、マンモスまで私一人での運転である。さすがにこの時間帯は道路も空いている。途中、14番のフリーウエーの側に先日降った雪が残っている。ここに雪が積もるのは2年に一度くらい、それも12月中とはかなり珍しく、近年にないシーズン入りである。

 

マンモスに近づき395号線のフリーウエーを下りると雪の降る中チェーン装着の業者が道端に出て営業している。チェーンをつけるだけで$45だというからいい商売をしている。2キロほど進んで街中の入り口ではこれが$40になる。雪道でチェーンをつけたことのないスキー客を相手に、私に言わせれば必要ながらも、この値段は弱みに付け込んだあくどい料金設定の商売である。

 

さて、道端でチェーンを付ける人たちを横目に私はまだ先に行く。

道路上の雪がてかてかに光っておらず、新雪なのでタイヤは雪面を捉えている。いつでも止まれる低速でのろのろと進む。ザ・ヴィレッジからキャニオンロッジ近くにあるコンド・シャモニーまでは1500メートルほどの緩やかな上り坂になる。ここが一番の難所である。ここを乗り切れたらおそらく今回もチェーンの装着をしないで5日間を過ごせる。

坂道で一度止まったらそれまでである。止まらないように同じスピードを保ちながら緩やかな上り坂をいく。シャモニーの駐車場は10CMくらいの降りたての雪が積もっている。そこに強引に車を突っ込んで到着である。

    

 

荷物を入れてしばらくした午後2時45分、佐野さんとブライヤンがスキーから戻ってきた。雪の中ながら風がなく、視界が良かったので、なかいいスキーが出来たという。でも大雪のためスキー場の上部は4日間閉まったままで、下の数本のリフトしか動いていないそうだ。という事は、おそらくこの嵐が去る金曜か土曜まで山頂は開かないと思う。ブライアンは2日間滑って、金曜の朝帰る。そして菊池さんが金曜の夕方にマンモスに来る事になっている。

例によって夕飯の準備をしながらビールを飲む。いや、ビールを飲みながら夕食の準備をする。今日は鶏肉の生姜 にんにく炒めである。塩こしょうしておいた鶏肉を生姜とにんにくを下ろしてまぶし、さらに味噌と焼酎をまぶし2時間ほど漬けておく。玉ねぎを黄金色になるまで炒め、そこに漬け込んでおいた鶏肉を入れて軽い焦げ目が付くまで炒めて出来上がりである。これがご飯とも、ワインとも合う。

 

夜になっても雪は止むことなく降り続けている。

クリスマスの朝、4時くらいから除雪機が動き始め駐車場の除雪が始まる。一晩に30cm以上の雪が積もると除雪した雪を何処にもって行くかが冬の間の悩みの種である。除雪機のうなり声が早朝の静寂の中に響く。嵐は朝方にさらに激しくなり、起きてはみたが、「今日はスキー場開くのかね?」と言うほどの嵐である。心配していてもしょうがないので、9時ごろに徒歩でキャニオンロッジに向かう。ホワイトクリスマスの白いギフトで辺り一面白銀の世界である。

 

キャニオンロッジには先シーズンでフロリダに引き上げるといっていた、アントンのクレープ屋の屋台がまた出ている。やはり一冬で一年分稼げる場所はそうないと分かり戻って来たそうである。8番リフトだけが動いているので、佐野さんがアントンと話している間に私は様子を見にひと滑りしてみることにする。吹雪の中、唯一開いている林の中にある8番リフト乗り場にラインが出来ている。リフトに乗ると思ったほど寒くはないが、ときたま突風が襲う。8台ほどのスノーキャットがゲレンデにでて、一斉にグルームを始めた。

 

まずはレッドウイングを滑ってみる。ここは滑りこまれるとモーグルが出来る斜面であるが、今は30cmほどの新雪に覆われ、モーグルはないが、すでに斜面は荒らされている。雪はいくぶん重く滑り難く、体力を使う。このところ腰痛をかばい運動をしていない我が身には結構こたえる。次にブルージェーを滑ってみる。ここはかなりの斜度があり、かえってスキーを滑らせてくれるので重い雪の中では雪に乗りやすく面白い。しかし体力的には重い雪を攻め続けるには持続性がない。

 

2本滑って佐野さんの所に戻り、少し休んで二人で8番に戻る。何せ今日は他にチョイスはない。このリフトも高速にしてくれたらいいのだが、マンモスに残る最も古いリフトの一つとなってしまった。やはりグルームされた斜面が楽である。でもそれではせっかくの新雪の楽しさを味わえない。リフトを降りて左側にぬけ、まだあまり荒らされていない23番の方に向かう。先に滑り始めた私は途中で止まって佐野さんを待つがなかなか来ないのでそのまま滑り続ける。所々に良い雪が残ってはいるが重い雪にスキーが進まずショートターンは厳しい。スピードを保ち中くらいの大きさのターンをしながら新雪を滑る。

下まで降りてかなり遅れて佐野さんが追いついてきた。もう一本先の斜面をおりて、派手にこけて来たらしい。

天候が悪く視界が悪いので午前中で止めてコンドに戻ることにする。スキーをする上で一番悪いコンデションが視界が利かない事である。コンドにもどり、雪に埋まった車を掘り起こし、明日帰るブライアンの車にチェーンをつけてあげる。何せ若い彼はこんなに遠くまで車を運転したことはないし、雪道はもちろん初めてである。

      

 

日が変わり26日、昨日と打って変わって晴天である。待ちに待った嵐の後の快晴で風もなく今日は最高の予感。

真っ白な雪が付いた木々と青空がまぶしい、見事な雪景色である。

珍しく佐野さんに急がされ、8時20分キャニオンロッジに向かって歩き出すが、もう少しでキャニオンロッジに着こうというスキー場の駐車場で財布を忘れてきたことに気づいた。でも佐野さんが小額のお金を持っていれば良いことである。佐野さんに聞いたらなんと、なんと佐野さんも財布を忘れてきていた。二人とも一文無しではどうにもならないので私がコンドに取りに帰る事になった。そろって財布を忘れるとはいいコンビである。最高の雪が待っているのに、ここで15分ほど遅れをとってしまった。

 

8番リフトが動いていない。昨日酷使されて壊れたか?ネットを張っていた従業員に佐野さんが、「今日は何で8番リフトが動いていないんだ」と聞いたら「ノット・ラニング」という返事。ひょっとして今流行の お馬鹿キャラ?動いていないのは見たら分かる。

 

まずはキャニオンロッジエックスプレスで上がり、リフト上から何処を滑るか当たりをつける。上から見ると良さそうな処がまだ残っている。まだあまり荒らされていないローラコースト に下りてみることにした。実際に滑り出してリフト上から好く見えたところも、滑ってみたら高度が低いせいもあり風で少し雪が固まっている。憧れのパウダーとは違うがそれでも上手く雪に乗ればそれなりに楽しめる。その後22番リフトから5番の上に出る。高度が上がれば雪質も良くなる。一部グルームされており、佐野さんはそっちに向かう。私はグルームされていない方へ。

距離は短いが、ここはかなりパウダーぽい雪質で、気持ち良く雪に乗れた。久しぶりの新雪に乗る感覚に大満足。しかしこれで終わりではない。5番リフトはまだ動いていないので、ミルカフェのスタンピーアレーに行き、ここを気持ちよくノンストップで一本滑って休憩。

私が席を探しているうちに佐野さんが斉藤(太)さんを発見。稲荷寿司やら自家製の漬物、燻製の鶏肉までご持参で御相伴に与る。最近料理の出来る男はもてると聞くが、とりあえず我々には大もての斉藤さんである。

別々に滑っていたブライアンは仕事の都合ですでにエルエーに向かっている。電話でビショップまで無事着いたと連絡が入り一安心。

昼休みの間にフェースリフトが開いたので、3人でフェースからウエストボールを滑る。リフトが動き始めたばかりだと言うのに、新雪はあっという間に荒らされてしまっている。何時もは瘤のあるウエストボールの斜面であるが、腰を庇いながらも気持ち好く滑ることが出来た。フェースの裏が開いたので裏から23番リフトの下までトラバスカットして行く、ここはまだあまり荒らされていない新雪がかなり残っている。適当にトラバスして、ここから滑ることにする。雪は軽い、1,2・1,2のリズムでスキーを雪に浮かせて新雪の上で左右に漕ぐようにターンしていく。

 

先に下りてしまった私はしばらく待つが二人の姿を見失った。先に進み斉藤さんの好きな12番が動き出したのが見えたので打ち合わせはなかったが、絶対に二人もここに来ると踏んでラインに並ぶ。しばらくするとやはり二人がラインの後ろについた。

 

      
   粉雪をける見知らぬスキーヤー

     
ウエストボール、23番下を行く斉藤さんと佐野さん

 

上にあがったら裏山の13番リフトが動きだしたとスキーや、スノーボーダーが一斉に裏斜面に向かっている。我々も当然向かうことにする。そこにはほとんど手付かずの斜面がある。一つの斜面の上で、佐野さんが「ここはどうかね、固いかな?」というが、私の勘でその言葉が終わる前に先頭で滑り出していた。かなりのパウダーで柔らかい雪である。実際には15cmくらいしかスキーは潜らないが、その下には4日間嵐のため開いていなかった1メートル以上の新雪がある。私の後に二人も続く。雲に乗るような深雪を結構な長さ楽しめた。下についた3人は思わす顔を合わせて「良いんじゃない!」と大満足の言葉を掛け合う。

    

 

13番で戻って、もう一本、今度は林の中に入ってみる。これまた気持ち良く立ち木の間を縫う。下に下りると先ほど動いていなかった14番が動いている。早速飛び乗る。ここのリフトの上からの眺めは抜群である。まだできはじめであるが、ここは樹氷が出来る場所である。真っ青な空に白い樹氷が美しい。この裏山はかなりの広さがある。何処から滑り出すかでいろんな斜面と雪質がある。コース選びは責任重大、斉藤さんに選択を任せるが、最初の滑り出しは雪が硬い。私はすぐに左へと逃げる、二人はそのまま下りて行く。私の選んだコースはまだ踏み込まれていない雪がけっこう残っている。ここからはパラダイスである。深い雪の上にスキーを浮かせて乗れた時は雲に乗った感じ。ふかふか雪を堪能して二人に報告すると、彼らのコースも後半は凄く良かったという。14番をもう一度、先ほどと比べるとあっという間に荒らされているが、荒らされていても軽い雪だとほとんど新雪の状態と変わらずに滑れる。

 

もうすでに午後2時を回っている。メインロッジに向かう。後半は斜度がゆるくなり漕がなければならないのでその直前を直滑降で下りてスピードで距離を稼ぐ。珍しく斉藤さんが私の目の前で大転倒。しっかりと証拠写真を撮らせてもらう。バッチリ。

    
マンモスでももっとも美しい樹氷の出来る14番にて 、私、斉藤さん、佐野さん

 

斉藤さんはスタンピーアレの駐車場に車を停めているが、私と佐野さんは帰る為にはどんどんキャニオンロッジへと向かわなければならない。斉藤さんとスタンピーで最後の一本、佐野さんが行く、斉藤さんが行く、腰を労わり私がしんがりを務めることになるが、気持ちよく滑る二人を追う、すぐ前の斉藤さんに並んで滑ろうと思い、少し距離をつめていく。その時二人の間に人が瞬間的に入った。そして斉藤さんとの距離感を失ったと思った瞬間、斉藤さんのスキーが私のスキーに引っかかった。斉藤さん側からすれば私が左側から目の前に飛び出した形だから私に完全な非がある。斉藤さんが派手に本日2度目の転倒をした気配に私も止まる、転び方が派手だったので、パトロールの人が来てくれた。私も20mほど戻って声をかけて謝る。転び方もベテランの斉藤さんは、毛がはなかった。(すみません、古典的なパターンです)

スタンピーの駐車場に車を停めてある斉藤さんとはここで別れのはずであるがもう一度ゴールドラッシュのリフトを付き合い我々を見送ってくれるという。

 

斉藤さんを夕食に誘って先にコンドに戻る。いつのまにか3時半、こんなに滑ったのは久しぶりであるが、良い深雪を滑れて感動の一日であった。新雪はまさに我々スキーヤーにとって最高のクリスマスの白い贈り物であった。

菊池さんがマンモスに向かっているので何処を走っているか連絡をしてみる。携帯電話は街から離れた山の中では使えないところが多い。前回、菊さ池んと私の携帯には電話機能の他に普段仕事でも使うDC機能がついている事がわかり、今回番号を交換していた。これはサテライトを使った無線機能で、少なくとも北米なら何処に居ても直接話せる。

私の呼び出しに菊池さんが答える。我々がスキー場で使っている無線ラジオに比べまったく雑音がなくクリアーな会話ができる。

 

8時に菊池さんが到着する。遅い食事も乾杯の用意も出来ている。

菊池さんを交えてシャンペン、ワインを飲みながら今日の斉藤さん転倒事件の裁判である。仮現場検証を交えながら斉藤さんはついに私が突き飛ばしたなどと著しく事実と異なる証言をしだす。大体、斉藤さんは今でもホッケーをしている人だから突き飛ばされようが、転倒させられようが慣れたものであるはずである。あの手の格闘技、乱闘系のスポーツをする人は、少なからず I love Pain 系の人に違いないと私は思っている。それに彼の今までの言動を見ていれば、たとえ斉藤さんの言うことが事実でも裁判の勝ち目は私にあるはずであった。あそこで謝ってしまったのが私の今日犯した唯一の誤りか?

それでも私はやっていない。いやいや、これは最近見た映画の題名をつぶやいただけです。

 

斉藤さんが昼に振舞ってくれた燻製は彼の自家製でレセピーは次のようなものだという。まず普段雑巾を入れているバケツに塩水をつくる。その時の塩は沖縄の塩・・・を作るのと同じ海で採れた塩でなければいけないらしい。大体の海は繋がっているからね。一晩塩水につけた後、庭に落ちた小枝をチップして水を含ませておいてそれをまずはチャコールの上にかぶせる。その上にお茶っ葉をかぶせる。これは斉藤さんが何時も飲んでいる安いお茶でないといけないらしい。ここで安いお茶を使うのが斉藤さん流のこだわりだと言う。さらにそのままでは燃えてしまうので、ここでキューバ産のブラウンシュガーを降りかけコーティングする。名柄を聞いたらC&Hという何処でも買える安い砂糖であった。勿論キューバ産でもない。これで蓋をして3−5時間置いておけば完成。確かに手間は掛かっているが、その手間の大部分はぶち込んで放っておくだけ。なにがしの燻製、これを佐野さん、菊池さんが褒めまくるのが理解できない。だいたいこの2人、私が今日作った夕食のサラダ、ハンバーグステーキをほうばりながら斉藤さんの燻製を絶賛し続けるとはどういう了見か。感謝の気持ちを忘れてはならないと思う。斉藤さんも斉藤さんである夕飯を担当してくれるようなことを言っていて、来たら「台所は他人が入ってはいけない場所」などと申し、結局私が作ることに。

それでも斉藤さんは 「オモロー」、である。

  
雪に埋まったスキーを探す斉藤さん、と駄洒落連発の夕食風景

 

3日目、朝から晴れ。今日は斉藤さんはスタンピーアレーの駐車場で8時に嘉藤さんと待ち合わせているそうで、誘われたがそんな元気はない。昨日滑っていない菊池さんは元気いっぱいのはずであるが、そろって出発したのは9時を回っていた。

出掛けにまたしても一騒動。今回はドアを閉めてコンドの鍵を誰も持っていなかったことに気づいた。佐野さんが管理人室に連絡を取り、3時ごろスペア キーを持って来てもらうことになった。

まずは昨日の新雪を滑れなかった菊池さんを5番に案内して、そこから見たゴンドラの終点からデーブスランに向かったはずれの斜面に新雪がかなり残っているのが見えた。「菊池さん、あそこ滑ってみたい?」と聞いたら行きたいという。ゴンドラに乗って山頂に向かう。上から見るとかなり急な処を大きくトラバスして斜面の外れに行かなければならない。ゴンドラを降りてコーニスを行くという佐野さんを置いて菊池さんとゴンドラの下から斜面に入って右へ右へとカットして行く。急斜面を長いトラバスで途中で休みながらやっと下から見つけた斜面にたどり着いた。この斜面だけまだ荒らされ方が少ない。

急斜面なので、なだれの可能性も皆無ではない。慎重に斜面のコンデションを見てから「間隔を開けて滑って来て下さい」、と声をかけて滑り出す。昨日と比べて少し雪が重いがけっこう長く続く深い雪を楽しめた。続いて滑って来た菊池さんとマッコイステーションに戻り一休み。

昨日滑っていない菊池さんにとって、久しぶりの深雪だったはず。

    
長いトラバスの後、深雪を滑る菊池さん

その後スタンピーアレーを滑っていたら斉藤さんに見つかってしまった。嘉藤さんと一緒ではない。聞いたら嘉藤さんは元カナダのナショナルチームの人と会って一緒に朝から休みなく滑っているという。斉藤さんは何本か追っかけたが、とても続かず勘弁してもらい別行動で滑っていたそうだ。やがて嘉藤さんも引き上げてきて斉藤さんが持参の食材を使い、サンドイッチを作ってくれる。

午後から嘉藤さんがビデオ撮りをしながら12番を滑る。久しぶりに嘉藤さんと滑るので後を追いかけるだけでも参考になるし、時たま教えてもらいながら13番、14番を滑る。今日はグルームされた斜面が主であるが、しっかりとスキーのエッジが食い込むので気持ちいい。

 

雪がいと時の経つのを忘れる、今日もまたスキー三昧になって滑りすぎである。斉藤さん嘉藤さんと別れてキャニオンロッジに引き上げる。最後の斜面レッドウイングには程よいバンプが出来ていた。佐野さんが先に行く、途中で止まるかと思っていたのにそのまま下まで降りた。止まったところで振り返っているので私が滑る、やはり雪がいいので気持ちいい。ぽんぽんぽんと凸凹を乗り越えてそのまま一気に下りる。佐野さんの少し下で止まって上を見上げると最後の菊池さんが滑り出す。今日の仕上げとして3人満足の滑りであった。

    
嘉藤スキー教室
 

着替えてすぐに、今回始めて車を出して佐野さんと街に買出しにいく。佐野さんのリクエストはチキンカレーである。鶏肉と何品かマーケットで買い物の後、ロビンのスキーショップに寄って見る。思ったとおり斉藤さんと嘉藤さんがいた。嘉藤さんはロビンとは20数年の付き合いがあり、冗談でなくロビンの息子のオシメを変えた事もあるという。来年のスキーを何本かオーダーしている。私も来期のストックリーのローターをオーダーする。入荷は来年の秋である。

 

後でうちのコンドで会うことになっているので、二人と別れてコンドに戻りカレーとサラダを作る。私のカレーのこだわりは、水っぽいカレーでなくドロドロである事と、ソースなどをかけないで、その味のままで充分にご飯になじむ事である。隠し味はトマトケチャップと醤油。今回はちゃんと私の料理に感謝して欲しいものである。

5時半くらいに二人がやってきた。佐野さんがマティーニを作る、ワインを開ける。今日は忘年会である。嘉藤さんが11月に参加したオーストリアでのスキーの話しや、斉藤さんのおやじギャグで盛り上がる。今回嘉藤さんは始めてヨーロッパにいって、大いに感銘を受けたという。彼の世代はウエストコーストの風に吹かれてアメリカを目指した世代であるが、私の世代はアメリカを感じつつ、アメリカはいつかいける、まずはヨーロッパの時代であった。アメリカの文化は所詮ヨーロッパのまねっこであり、ヨーロッパなくして考えられない。嘉藤さん、深い伝統と歴史がヨーロッパの小さな村にまであるのを見て、それを改めて感じたという。

私のカレーは評判が良かった、それとも昨日の罪滅ぼしか、ともかく美味しいと言ってもらえてこそ料理する意欲が湧く。食事の後はビデオを見ながら嘉藤さんのスキー教室である。オーストリアでは全日本20何位の人と一緒に滑って影響を受けてきたようである。その嘉藤さんをして、スキーは奥が深いというのだから到達点のない体力の続くかぎり続けたい趣味である。そしてそのまま嘉藤さん撃沈。

 

翌朝、今日は忘れ物がないように佐野さんが点検をする。「部屋の鍵を持った?ロッカーの鍵は」というので、「人の事は良いから自分の点検を」と釘をさす。

と言いながらも私の出がけの探し物のサングラスはスキー帽の上、つまり私の額にあった。佐野さんが、「自分の落ち度は書かないスキー三昧の裏側を描くプログを作らないといけないね」

はいな、佐野さん、自分の落ち度も書いておいたよ。しかし、私と顔を突き合わせながら一緒にサングラスを探してくれた二人は私より??

 

今日も晴天であるが、ゲレンデに立つと昨日より気温が上がり急速に雪質が変わりつつあるのが分かる。すでに昨日までのパウダースノーはなく、踏み固められてパックトスノーへとコンデションは変わりつつある。

朝一番の5番は良いグルームであった。気持ちよくショートターンが決まる。コースの後半、佐野さんと菊池さんの写真を撮っていたら上から声が掛かる。リフト上の斉藤さん、嘉藤さんに見つかってしまった。リフトに乗っていると、二人が我々に追いつこうと、かっとんで来る。リフトを降りて我々はドライクリークへ向かう。ほどよい瘤が出来ている。しかし後半で私はお腹が差し込んできて、緊急事態となり二人と別れてミルカフェのトイレへと向かう。

フェースにもどりウェストボールを滑って二人を捜す。前へ突っ込む意識で身体が遅れないように心がけて滑る。3本滑ってこれは疲労のせいか、一本目が一番満足の滑りであった。

 

菊池さんが迎えに来てくれて、3人揃ったところで菊池さんがデーブスランに行きたいと言うのでゴンドラで山頂に向かう。菊池さんが自分からデーブスを滑りたいというのは珍しい。勿論大歓迎、喜んで行きましょうである。デーブスランは昨日菊池さんと滑った斜面のもっと先、マンモス山頂から一番西側に位置する急斜面で、昨日滑った嘉藤さんが褒めていた斜面である。馬の背のような形のお尻の部分である。高度が高いので雪質が良く、けっこう凸凹していたが滑れる斜面であった。そこからキャニオンロッジに戻ろうとしてコースを一筋間違えて違うところに出てしまい、その間菊地さんとはぐれた。菊池さんはほとんどこの西面のコースを滑ったことがないので、迷わず戻れることを願い、キャニオンロッジへと急ぐ。

ロッカーの前で菊池さんと出会い、これで私は今年の滑り収めである。

    

    
佐野さん、                    菊池さん                          私

    

 

雪が柔らかいと腰へのショックも小さく、充分に滑ることが出来た。とは言い、100%ではない、休みを多く取りながら滑った。腰が痛い、肩が痛いの私と佐野さんは帰りにビショップの南にある温泉に寄って疲れを取って帰ろことにした。通り道にある温泉であるがマンモスで宣伝しているわけでないので、知っているスキーヤーは少ない。入場料8ドルを払って入ると温泉プールと温泉スパがある。プールの周りに着替え室とシャワーがある。海パンに着替え一時間ほど温泉とプールに浸かる。温泉と聞いただけで気持ちがリラックスして、身体の疲れが抜けていく思いである。
着替えた後、プールの脇でホットドッグを食べる。「ビールが欲しいね」と佐野さん。こんなこともあろうかと、車に積んだクーラボックスの中に一缶だけビールが入っていた。しかしここで飲むわけにはいかないだろうと思っていたら佐野さんが売店からコカコーラのカップを貰ってきた。「これに入れたらコーラを飲んでるとしか見えないよ」さすが佐野さんナイスです。車の中でクーラボックスのビールをカップに移し変えて戻り、ホットドックを食べながら二人でコーラを飲むような顔をしてビールを飲む。二人で一杯しかないところが良い。

  

  
久しぶりの温泉のあと、コーラの入れ物の中身はビールである

 

温泉を出ると3時になっていた。ルート395を南に向かう。続々とこれからマンモスに向かう車とすれ違う。右に見えるシェラネバダ山脈はもちろん、左側の何時もは雪が降ることの少ない山々まで薄化粧をしている。
今回嵐の中をマンモスに着いて、吹雪の中を滑り、その後の3日間は快晴の中まだ腰を庇いながらではあったが、気持ち良く新雪を滑ることが出来た。これだけマンモスに通っている私でも今回ベスト3に入るコンデションに大満足であった。雪はまさにクリスマス休暇に合わせて自然がくれた素晴らしいホワイトギフトであった。


  

 

佐野さん、斉藤さん、嘉藤さんは一度帰って大晦日からまた4日間マンモスにスキーに戻る。家庭持ちの私はお正月は家でゆっくり過ごすつもりである。

皆様に2009年が良い年でありますように。